Stripe とは
ウェブサイトやモバイルアプリに簡単に決済機能を組み込めるクラウドベースの決済プラットフォームです。開発者向けの豊富な API を通じてクレジットカード決済やウォレット、銀行振込など幅広い支払い手段に対応し、不正利用防止や請求管理、サブスクリプション管理などビジネスに必要な機能をワンストップで提供します。以下ではその概要から主な機能、動作の仕組みまでわかりやすく解説します。
概要
- Stripe とは ウェブ開発者が自社サービスに決済機能を組み込むための API を提供する企業・サービス。
- 創業 2010 年にアイルランド出身の兄弟 John Collison と Patrick Collison によって設立。
- 市場規模 決済処理市場は 2022 年の約 656 億ドルから 2032 年には約 1,980 億ドルへ成長予測されており、オンライン決済の重要性が増大している。
主な機能
1. 決済処理 API
- クレジットカード決済、デビットカード、Apple Pay/Google Pay、銀行振込など 100 以上の支払い方法に対応。
2. マルチパーティ決済(Connect)
- プラットフォーム事業者が複数の売り手を集約し、個別に決済を振り分けられる Stripe Connect を提供。
3. 不正検知ツール(Radar)
- 機械学習を活用した不正検知サービス Radar により、年間数十億ドル規模の不正取引をブロック可能。
4. 定期課金・請求書管理(Billing)
- サブスクリプションモデルの構築、明細書の自動送付、トライアル期間管理などをサポート。
5. オフライン決済(Terminal)
- Stripe 端末を使った実店舗向けのカードリーダーで、オンラインと同じダッシュボードで売上管理が可能。
6. 税金計算(Tax)
- 世界 30 か国以上の売上税・付加価値税(VAT)・消費税(GST)を自動で計算・徴収する Stripe Tax を提供。
7. ホームレス決済リンク(Payment Links)
- コーディング不要で決済ページへのリンクを生成し、SNS やメールで共有可能。
8. 銀行連携(Financial Connections)
- 顧客の銀行口座と直接連携し、口座所有者の確認や残高チェックを行い、支払い失敗を低減。
動作の仕組み
- フロントエンド
- Stripe.js や Payment Element を読み込み、支払いフォームを埋め込む
- バックエンド
- API キーを用いて決済リクエストを生成し、PaymentIntent(支払いセッション)を作成
- フルフィルメント
- 支払い完了後、Webhook でサーバーに通知を送り、注文処理や在庫更新を実行
利用用途
- E コマースサイト: 商品購入ページの決済処理
- SaaS: サブスクリプション課金の管理
- マーケットプレイス: 売り手ごとの売上配分
- モバイルアプリ: インアプリ購入や定期支払い
料金と手数料
- 基本手数料: 国内発行カード 3.6% + 40 円(日本の場合)など、国や通貨によって変動
- オプション機能: Radar、Connect、Billing、Tax などは追加料金が発生する場合あり
セキュリティ
- PCI DSS 準拠: 決済カード業界データセキュリティ基準に準拠
- データ暗号化: 通信はすべて TLS 1.2 以上で暗号化
- トークン化: カード情報はトークン化して保存、漏洩リスクを低減
Stripe.js とは
- Stripe.js は Stripe の基盤となるクライアント向けライブラリで、ブラウザ上で動作しつつカード番号などの機密情報を直接 Stripe に送信してトークン化し、自サーバー経由の不正アクセスリスクを軽減する
- このライブラリ上で動作する UI コンポーネント群が「Stripe Elements」で、事前デザイン済みの決済フォームを簡単に組み込める。
- Stripe.js は非同期で読み込まれ、自動的に最新バージョンが適用されるため、ライブラリのアップデートやセキュリティ対応を意識する必要がほとんどない。
- npm パッケージ
@stripe/stripe-js
として提供され、loadStripe
関数で読み込むのが推奨パターンである。
ラッパー(wrapper)とは
- ラッパーは既存のライブラリや API を別のインターフェースで包み込み、利用しやすくするためのコード層のことを指す。
- デザインパターン的には「Adapter パターン」に近く、クライアントコードと実装(Adaptee)を切り離し、依存を減らす役割を果たす。
- たとえば React アプリで使う
@stripe/react-stripe-js
は、Stripe.js(Elements)を React コンポーネントとして扱えるようにした薄いラッパーである。 - ラッパーを使うことでコールバック API を Promise ベースにラップしたり、設定オプションを簡略化したり、型安全なインターフェースを提供したりすることができる。
- より高度な例では、C/C++ライブラリを Python など他言語から呼べるようにする SWIG のようなツールも「ラッパー生成器」と呼ばれ、異なる環境間で API をかぶせる役割を担う
React Stripe(@stripe/react-stripe-js
)とは
- Stripe.js の統合
- Stripe のブラウザ向け SDK である Stripe.js を React 環境で使いやすく抽象化したライブラリで、
npm install @stripe/react-stripe-js @stripe/stripe-js
で導入可能。
- Stripe のブラウザ向け SDK である Stripe.js を React 環境で使いやすく抽象化したライブラリで、
- 主な提供機能
Elements
プロバイダー: アプリ全体で一度だけ Stripe インスタンスを初期化し、子コンポーネントに流用できる仕組みを提供- 各種 UI コンポーネント:
CardElement
、PaymentElement
、LinkAuthenticationElement
など、支払いに必要なフォーム要素を準備
- メリット
- React のライフサイクルに合わせたロード/アンロード管理
- 再レンダリング最適化や TypeScript 型定義付き
Elements
コンポーネント
-
役割
- Stripe.js の
stripe.elements()
を内部で呼び出し、Element(フォーム要素)のインスタンスを生成するファクトリをロード - React Context 経由で子孫コンポーネントに
stripe
オブジェクトとelements
オブジェクトを供給 。
- Stripe.js の
-
使い方
import { Elements } from "@stripe/react-stripe-js"; import { loadStripe } from "@stripe/stripe-js"; const stripePromise = loadStripe("your-publishable-key"); function App() { return ( <Elements stripe={stripePromise}> <YourCheckoutForm /> </Elements> ); }
-
利点
- 一度ロードした
stripe
オブジェクトをコンポーネント間で共有でき、再初期化のコストを削減 - 標準的な React Context として扱うため、Props のドリルダウン不要
- 一度ロードした
PaymentElement
コンポーネント
-
概要
- Stripe の最新 UI コンポーネント群(Payment Element)を単一のコンポーネントで提供
- カード情報だけでなく、地域に応じた多種多様な決済手段を自動的に切り替え表示可能 。
-
特徴
- 統一 UI: カード、Google Pay、Apple Pay、Afterpay、iDEAL、Alipay などを一つのフォームに統合
- 自動バリデーション: 入力マスク、エラー表示、必須チェックなどが組み込み済み
- ローカライズ: ユーザーの言語/通貨設定に応じた表記
- ダイナミック表示: Backend から返された
PaymentIntent
のpayment_method_types
に基づき表示を最適化 。
-
利用例
import { PaymentElement } from "@stripe/react-stripe-js"; function CheckoutForm() { // ...stripe と elements の取得処理... return ( <form onSubmit={handleSubmit}> <PaymentElement /> <button type="submit">支払う</button> </form> ); }
-
導入メリット
- 一つのコンポーネントで最新の決済フローをキャッチアップ
- UI と UX を Stripe 側でメンテナンスしてくれるため、開発コスト削減